1901年、オーストラリアはイギリスから独立しました。日本ではこの年に北九州で八幡製鉄所が操業を始められ、重工業を基礎に富国強兵策が本格的になりました。その後、1931年にイギリス連邦(The British Commonwealth)が結成されると、1942年にウェストミンスター憲章を採択、英国王に忠誠を誓う形でそれに加盟しました。国旗の左上にユニオンジャック(英国旗)が染め抜かれているのはご存知のとおりです。
その広大なオーストラリアの西側1/3を占めるのがWAと略記される西オーストラリア州です。面積は日本の8倍にも上りますが、人口は200万人強で、そのほとんどが州都パースとその近郊に住んでいます。というよりも、内陸は乾燥が強いなど、居住が難しい環境にあるというのが本当のところでしょう。
パース郊外にも荒涼とした大地 引率者の知り合いの農場
WAといえば豊富な天然(鉱産)資源で知られています。日本が年間に消費する鉄鉱石の6割近くが西豪州から輸入されるのを始め、天然ガス(LNG)やレアメタル、レアアースなど、掘って出ないものはないのではないかと思うほど資源に恵まれ、世界各国に輸出しています。そのほかにも飼料などが多く日本に輸出されています。
そういうわけで各国からの投資も相次ぎ、WAは今、経済ブームに沸き立っています。いたるところで大規模な建設工事が行われています。今年になって日系銀行もパース支店を出店しました。バブル、という人がいますが資源の産出に裏付けられた好景気をバブルと呼んでいいのか、議論の分かれるところです。それにしては対円の為替レートの変動が大きく見えますが、これはたぶん通貨規模の問題に起因するところが大きく、こちらの経済はいたって高め安定だと思われます。

パース駅前の再開発工事 去年ここにあった、親切なおじさんのいる案内所はどこに行った?
さて続いて、研修生が学習するUWAのお話。UWAの正式名称はThe University of Western Australia(西オーストラリア州立大学/西オーストラリア大学)で、1911年に創設された州内で最も歴史のある大学です。本大学は、オーストラリア国内のトップユニバーシティで構成されるGroup of 8(オーストラリア8大学)のメンバーにもなっています。また、大学のエンブレムに“Achieve International Excellence”とある通り、研究成果の面でも世界レベルです。あの胃潰瘍の原因菌と特定されたヘリコバクター・ピロリ菌を発見してノーベル賞を受賞したバリー・マーシャル博士もUWAの研究者です。

キャンパスのシンボル・時計塔からC.B.D.を望む
近年、オーストラリアとニュージーランドの政府が共同して誘致に尽力しているSKA(Square Kilometer Ally;1km四方に展開される電波天体望遠鏡群)の本体がWAの砂漠地帯への設置計画が上がっています。その関係でUWAが研究拠点大学のひとつになっているのです。カーティン大学など州内の他大学と共同で研究しており、UWAは特に画像や数値を解析するcomputer分野を担当しているようです。天文教育に力を入れる本校としても大変興味深い活動をしています。
そういえば今日、キャンパス近くを歩いてたら、地元の学生に道を聞かれました。いつもと違う建物で授業があり、あわてているようです。ちなみに引率者は、どこの国に行っても、現地語で道を尋ねられることが多くて戸惑います。研修旅行中も、これが初めてではありません。(香港空港では中国語で何か尋ねられ、パースの街中でも何度か・・・。実は関空でも日本語で・・・。)
CELTの入り口ゲート CELTのあるNEDLAND CANPUSのCAFE
彼は工学部(Engineering)の1年生でこのあたりには不慣れだということですが、UWAの学生にUWAの道案内をするとは。でも興味が出てきました。聞いてみよ。“What are you going to major?(専攻はどうするの?)”“May be ‘Mining’.(たぶん、鉱産資源工学を。)”“Is it popular here?(人気なの?)”“Yeah, I think so.(はぁ、だと思います。)”
聞くと彼は、WAの出身とか。何気ないやり取りから、自分の得意分野を自分の暮らすWAのために生かすことで、逆に、WAの恵まれた環境を自分のために生かす、という彼の意思が見え隠れ。キャリア教育や進路指導も担当する引率者としては、短い会話に刺激を受けずにはいられませんでした。兵庫県のため、日本のために世界に伍してやっていける人材になってほしいと強く願っています。
さて、海外研修もあと2日を残すのみとなりました。教室を覗くと、先日お知らせしたオーストラリア固有の動物についてのプレゼンテーションの準備の真っ最中でした。年次を超えて担当の先生が指定したペアでひとつの動物について調べ、辞書を片手にプレゼン内容を英語で作成していきます。

わからなければ先生にチェックを受けながら、より良い原稿を書き上げようと必死です。先生も、語句や語法、統語や文法の訂正だけでなく、内容にも言及していきます。2週間の付き合いで気心も知れて信頼関係が生まれ、先生の指導におのずと熱がこもります。そしてそれに応えるように楽しみながらも懸命に課題に取り組む研修生たち。国境を越えても、人間同士のつながりこそが人間を成長させるのだと実感する瞬間です。さて、金曜日のプレゼンを楽しみにして・・・。
この距離で英作文の直接指導・・・恵まれています。
【研修生のメッセージ・最終版】
○バスの乗り方をマスターしました。(K.O.)
○I’m enjoying myself every day. Australian people are very kind to me. I want to study more about different culture.(S.A.)
○違う国の文化を学べたし、本当に楽しい!!(K.S.)
○G’day! I’m in Australiaなう。My host family’s cat is very cute. And my Chinese friends are very interesting. また8/4に〜 See ya!!(M.K.)
○I’m having a good time! 世界観・価値観の違いが凄いある。
○英語で満ちあふれた生活も、何とか慣れ楽しくなってきました。西オーストラリアは寒いですが、人々は暖かい良い場所です。残りの研修も思い切り楽しみます。(S.S.)
「文化の違いに触れることは楽しいし、それを楽しめる人になってほしい。バスの乗り方だって価値観や世界観だって、違いは面白い。違っていることを『いやっ』と思う前に『へぇ』と思えるかどうか。同じhomestayの中国人の留学生と親交を深める。それもいいことだ。世界ってこんなに凄いんだ、と知ることが世界に伍してやっていく第一歩だ。そしていつでも、あなたが心を開く限り、違いを越えて人は暖かい。」
N.Miyashita@Perth