2013年07月27日

No.5 本邦初のSSH科学研修

Homestay Familyと終日過ごす最初の週末。天気が悪くちょっと残念な感じもしますが、長旅の疲れを癒すにはちょうどいいかななどと思いながら、ここ数日のことを振り返っています。

ということで、昨日7月26日(金)のSSH科学研修のご報告です。

【SSH科学研修】
集合はCELTのFoyer(玄関ロビー広場?とでも訳しましょか)に8:45 sharp!!という約束でしたが…8:30全員集合完了。Fantastic!

今日は一日Main Campusにある工学部棟・物理学部棟での実習です。と、その前に、今日の午前中、一緒に勉強するPerth Modern School(PMS)の生徒の皆さんとの顔合わせ。(PMSについてはhttp://www.perthmodern.wa.edu.au/を参照してください。)州内トップクラスの優秀な生徒を集めて質の高い教育を提供するPMSから、科学と日本語を同時に専攻する9人の生徒たちがやってきます。

UWAの学生団体が今日のために開発した「資源エネルギー」に関する体験プログラムを、祥雲生とPMS生が1対1の2人グループで学習していきます。「学生団体」とはいってもサークルのようなものではなく、研究や社会貢献を行う準公式の組織体です。

はじめのプログラムはThe Society of Petroleum Engineers(SPE)による「油田・天然ガス田開発」に関する講義とアクティビティです。まずは講義をしっかり聴き、振り返りテストで理解度を測定します。「どれが正しいのかな」と相談する各グループに1人ずつSPEの学生スタッフが入って、講義でわからなかったところを懇切に説明してくれます。学生スタッフが答えを間違えたりもして、会場が笑いに包まれ、なごむ場面も。
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講義が終わると、アクティビティです。2つのプロジェクト課題が与えられ、グループで協力して課題解決を図ります。

1つは「石油流出による海洋汚染を食い止めろ」。水を張った水槽に着色したサラダオイルを流して石油流出に見立て、協力して除去を試みます。与えられた道具は3連に結んだ輪ゴム、脱脂綿、キッチンペーパー、そしてその辺からとってきた「草(芝生)」。輪ゴムで表面の油を端に寄せてキッチンペーパーに吸わせたり、草を油の真っ只中に突っ込んで付着させたりと創意工夫を重ね、アイディアを出し合って格闘しています。
実は、輪ゴムは「オイルフェンス」、キッチンペーパーや脱脂綿は油の吸着剤というように、流出事故対策に実際に使われるものを模しているのです。じゃ、「草」は?沿岸部の流出事故では、特殊な植生を使って処理する方法があるそうで、そのことに気付かせる仕掛けだったのです。(ただ、生徒は誰も気付かず、答え合わせのビデオを見て驚いていましたが。)
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もうひとつは「海底油田開発のための強固なプラットフォーム建設」。ストローを鉄筋に見立て、粘土を使って組み合わせながら構造物の強度について体験的に学習できるアクティビティーです。強度を高めるには2本のストローを束にして・・・と、ここで「筋交い」を入れることに気が付いたのは、祥雲生でした。地震国・日本ではみんなが知っているこの知恵をPMSの生徒たちと共有していきます。
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協働作業の副次的効果として、講義のときは硬かった双方の生徒の表情にも、笑顔がのぞくようになりました。

ところで、なぜ「油田・天然ガス田」開発の学習なのか。2012年の統計では、オーストラリアは対日本の液化天然ガス(LNG)の最大の輸出国(largest supplier)になりました。そしてここ西オーストラリア州(WA)の北西沿岸海底油・ガス田(the North-West Shelf)が国内最大規模のものなのです。LNGは都市ガスのほか、火力発電の燃料としても多く消費されており、原発政策の先行きが不透明な現状にあって、その安定供給が最重要課題となっています。それを友好国・日豪の若者が共に学ぶ姿に、心強さを感じる引率者でありました。

次は、The Australasian Institute of Mining and Metallurgy(AusIMM)という団体による鉱産資源開発についての模擬体験「Mining Games」です。ちなみにMetallurgy(メタラジー)は冶金とか金属精錬という意味ですので、鉱産資源採掘から精製までを総合的に研究している学生団体ということになります。掘って出ないものはないといわれるほど資源に恵まれたWAで学ぶには、またとないテーマです。

講義も早々に、模擬体験へ。(ところで、学生さんたちはなかなかのスピードでプレゼンしていきます。研修生の理解を助けるために今日は引率者が同時通訳的に訳していきますが、頭がクラクラしてきました。)

今日のGameは「Gold Panning」。深めの皿の上に金を含んだ砂を載せ、水の中でゆすったりくるくる回したりする、あれです。金に見立てた直径7ミリほどの金属5枚を、砂の中から文字通り「洗い出す」のですが・・・これが難しい。砂と一緒に水の中に沈めてしまう者続出、本当の金なら大損ですね。あとで探すの、たいへんだろうなぁ、と何ともいたたまれない気持ちでいっぱいです。
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などと考えながら振り向くと、アクティビティーの合間に和気藹々と交流を深める双方の生徒たち。若いって、いいなぁ。
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最後はChemical and Process Engineering Clubという工業化学を専攻する団体によるHYSYS DEMO。これだけだと何のことかわかりませんが、要は石油精製に伴う化学反応をパソコン上で模擬実験しようというもの。2人ペアで1台のパソコンをシェアしてバーチャル実験を行います。有機化学、まだ学習してないだろうし、わかるかなぁ。と不安に思っていると、ここでも学生スタッフが化学式からソフトの使い方まで、親切丁寧に教えてくれます。そして、化学式は万国共通か・・・。理系科目が苦手だった私には手も足も出ませんが、「まぁ、ぼちぼちわかりましたよ」と研修生。さすがです。
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ここで、最後にSSH科学研修のUWA工学部側の担当者Rob Blandford先生から課題が課されました。内容は、海底資源開発に関するさまざまな課題を、日豪の生徒が協力して考えるというもの。今日と来週の金曜日の2回しか会えない生徒たちですが、工学部によってデータベースが作られて、インターネット(online)で情報を交換し合います。大学が専門分野の知識を提供した後課題を課し、双方の高校生が共に取り組む。国境を越えた高大連携、科学技術をベースにした日豪の先進校同士の協同学習、研究交流・・この研修が本邦初の試みなのです。

お待ちかねの交流ランチ。CELTの手配でサンドイッチやフルーツが用意され、一緒に楽しく食事です。「はい、祥雲生もPMS生も一緒に座ること。Please be seated together with SSH students and PMS students! Especially with your buddy student.」と言おうと思って室内を見渡すと・・・仲良く同じ席に付き、食事もそこそこに写真を取ったり、連絡先を交換したり、わいわいおしゃべりをして笑いあったり。はい、私が野暮でございました。
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PMSのAnt先生が「PMS students, let’s head off for school! (帰るよ)」と声をかけると、「No~. I don’t want to go back.(え〜、帰るのいや〜)」と生徒たち。複雑な表情のAnt先生に、「わかりますよ、同じ教師として。ここにいさせてやりたいけど、午後の授業もあるからねぇ」といってお互い苦笑い。See you next Friday, PMS students and Ant-sensei.

午後は「天文学」の講義とインターネット望遠鏡の実習です。UWAがWA教育省とタッグを組んで、州内の小中高生に質の高い科学教育を提供するために物理学部に設置した「SPICE」というセンターのPaul先生の講義です。天体検索ソフトStellariumの操作操作実習、屋上の望遠鏡見学などなど、盛りだくさんの内容です。
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この望遠鏡、インターネットで遠隔操作して自分が観測したい天体に関して、離れたところからでも画像やデータの取得が可能なのです。研修生には帰国後もずっと使用できるユーザーIDが交付されます。Paul先生に小惑星Sandashounkanの話をし、ちょっと暗すぎて観測できませんかねぇと言うと、「No problem.この望遠鏡は19等星までいけるから。日本からでも、観測できるようになるね。」と一緒にうれしがってくれました。
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さて、密度の高い一日が終わりました。「何言っているか、わかってきた?」とある研修生に聞くと、「まぁまぁですかね。だんだん聞きとれる語数が増えてきたような気がします。」との答えが引率者の一抹の不安をぬぐってくれます。教員として生徒を育てているつもりが、私が育てられているのかなぁ。「負うた子に教えられ」とはよく言ったものです。生徒と一緒に私も成長できる海外研修。たまりません。

ガイダンス部長のつぶやき in Perth
パースの名所、スワン川沿いのホテルに滞在中。さぞ景色も良かろうと窓を開けると、方向が悪く見えるのは駐車場と工事現場。ため息をついてカーテンを閉めながら、パース市内の建設工事の多さを思い出す。WAは資源に支えられて景気がいいんです。高給を求めて国内他州からの移住も多いらしい。うらやましいなと思いつつ、日本唯一の資源・優秀な人材の育成の大切さに思いをいたしておりました。

N.Miyashita@Perth
posted by 三田祥雲館 at 13:47 | 兵庫 ☔ | Comment(1) | 海外研修