2013年08月05日

No.15 For the Better World in the Better Future

私は社会科(正確には地理歴史科・公民科)の教員で、社会で起こるさまざまな出来事に人一倍関心があります。

たとえば。

「子どもをむやみにほめるのは、かえって「ほめられ依存型」で独立性にかける人間を育てる結果となる。学校教育も生徒の主体性のみに焦点を当てた議論が横行しすぎている。家庭でも学校でも、適切な課題を設定し、それをこなせたら具体的にほめることが重要。小さい子なら『いわれる前におばあちゃんにお茶を持ってきてえらかったわね』などだ。」

「4歳の男の子に対する虐待で両親逮捕。収入不足との関連が濃厚と見られ、捜査当局が動機や手口を解明中。」

「財源が不足する中、行財政改革による政府の予算削減が大切だ。公務員数の削減、地方行政の改革と財政的自立性の確保等が最優先課題となる。しかし、支出削減による政治力の低下とそれに市民の生活の質の保証が懸念される。」

「子どもの教育の質を保証するためには、教員の指導力向上が望まれる。大学院修了者の数を増やしたり、現職教員の再研修制度などを充実させなければならない。教育は国の力に直結するからだ。」

「スマートフォンの普及でインターネットの利用時間が増えている。また、ネットを介した犯罪に巻き込まれる若者や中高年も多く、大きな問題になっている。」

最近興味を引かれた話題です。「大学で政治学を学んだ子育て中の教員」らしいラインナップですが・・・。何を今さら、Perthから書くことか、と思われましたか?

閑話休題。この2週間、研修生たちは何を学んだのでしょうか。

文化・語学研修では、異なる文化的背景を持った人々と暮らすことの大切さと難しさを、考えさせられました。それぞれの国がそれぞれの歴史を持ち、文化を発展させ、さまざまな考え方や生活習慣を持っていることも、身をもって経験しました。日々の暮らしの中で。
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また、生きた英語にも悩まされました。英語だけで進む英語の授業に戸惑いながら、聞きとれない不安、離せない不安でいっぱいでした。研修開始直後、「学校の授業なんか、役に立たないですね」と言ったあなた。でも最後には、「学校で習った単語や英語が基本なのだと思い知りました」と考えを新たにしていました。それだけで大収穫です。
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日本の英語教育は間違っていない。幼いとき、自転車の乗り方を覚えたときのことを思い出せますか?あなたが自転車に乗れるようになったのは、あなたが「自転車に乗りたい」という無垢な心で必死にがんばったからです。つまり、教わったことをどれだけ消化し使いこなすか、あなた自身にかかっているのです。英語がしゃべれない原因の多くは、転ぶのが恥ずかしくて、「英語がしゃべれるようになるまでは、しゃべらない」という自家撞着のメンタリティではないでしょうか。転んだって、起きればいいのです。「自転車に乗りたい」気持ちが、「恥ずかしさ」に勝っていたあのころを思い出して。実際、Homestayに放り込まれ、抜き差しならない状況になって2週間、何度も転びながら英語で生き抜いたではありませんか。
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SSH科学研修では、資源、エネルギー、天文学の各テーマを通して、WAの豊かな自然と同時に、抱える課題について多くの示唆を得ました。
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ボーキサイトの開発は植生環境の復元が一体で進みます。慢性的な水不足に見舞われるWAの現状を見るにつけ、日本では意識しづらい「水」という資源の有限性を考えさせられます。日本でも注目されている地熱の利用は、常に経済性とのかかわりから捉えなおされます。南半球の空高くにかかる天の川、ほぼ天頂を通る小惑星Sandashounkanの観測はPerth市の発する「光害(Light Pollution)」との戦いです。

Peter先生の教えを覚えていますか。人間の暮らしは必ず自然環境に影響を与えます。しかし、生きて行くためには仕方がない部分が大きい。ではどうするか。どんなエネルギーも産業も、Sustainability(持続可能性)・Renewability(再生可能性)・Economic Viability(経済的実現可能性)のバランスの上に成り立っているのです。

どんなにクリーンなエネルギーもコストが高すぎれば利用できない。コストが低くても、環境に致命的な影響を与えるのであれば捨てざるを得ない。そして、その判断の根底にあるのは科学者・技術者としてのMoral(道徳)とEthics(倫理)である、と。C.Y.O’Conner氏の胸像の前で神妙な面持ちで考えた、あの思いを忘れないでほしいと願っています。

日がたつにつれて耳も口も慣れ、度胸もつき、自信に満ちた表情に変わってきた研修生たち。しかし、それを自分ひとりで成し遂げたとは誰一人思っていないようです。わが子のように接して愛情を注いでくれるHomestay Familyに寄せる思い。わからないことをわかるように工夫して教えてくださるCELTの先生方への敬意。道に迷った時に多くのPerth市民に親切に助けられて感じた、文化や国境を越えた思いやり。その一つ一つが研修生の胸の中に大切に刻み込まれました。

Perthでの非日常の生活が徐々に日常になる中で、日本での生活を相対化した研修生。当たり前と思っていた日本での日常が、実は当たり前ではないということにも気付き始めているようです。制服のブラウスにアイロンがかけられていること、毎朝持たせてもらっているおいしいお弁当、安全に定刻どおりに走る日本の交通機関、叱ってくれる学校の先生たち、そして何より愛情たっぷりに包み込み明るい未来を誰よりも願う両親、家族などなど・・・。感謝している、でも、感謝などという言葉では表現できない。このことに思い当たってくれたとき、私が関空出発直前にしたお説教も無駄ではなかったかなぁと思うのですが・・・。

そして、帰国直後はもとより、10年後、20年後にも今回の研修を思い出し、自分自身の血となり肉となっていることに思いを致してほしいと切に願ってやみません。それが、今回の研修を支えてくださった日豪全ての皆さんへの、本当のご恩返しなのではないではないでしょうか。
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ところで冒頭のニュース、何をいまさら、と思われましたか?これ全て、私がこちらにいる間に新聞で取り上げられていた話題です。私も日本の新聞を読んでいるのか、こちらの新聞を読んでいるのか、混乱することがしばしばありました。そして、深く考えさせられました。私たちが危機感を覚えていることは、オーストラリアでも懸念されていることばかりです。もちろん2カ国だけのことではなく、先進国に共通の問題なのかもしれません。
何とかしなければと日々に思いながら、根本的な原因究明が進まない難しい問題です。教員として、責任を感じたり、危機感を抱いたり。

地球規模で文明が進展する今日、9000キロ離れたこの地でも、日本と同様の課題が社会を揺さぶっています。今日立ち寄った書店に「Why Do We Work?(私たちはなぜ働くのか)」というティーンエイジャー向けの本がありました。しっかり働くことへの若者の意識低下も日豪共通の課題のようです。
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若き研修生たちの双肩には、未来がかかっています。いま、大人である私たちの責任を放棄するつもりは毛頭ありません。しかし、激変する社会を切り開くのは、彼ら彼女らの世代の柔軟な力にかかっていると思っています。そのとき、若き日に触れたWAのことを思い出し、手を携えてよりよい世界を実現できたら、こんなにすばらしいことはありません。少し高望みに響くかもしれませんが、研修生の自信に満ちた顔を直接見られる引率者は、そう願わずにはいられないのです。(役得です。)
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パース天文台で撮影されたSandashounkan


さて、Perthから拙文を長々と綴った本ブログも、最終便となりました。引率者は明日の朝チェックアウトするとホテルに居場所もなく、夜の集合まで街中をさまようSwag Manになります。もしかしたらPerth出発のご連絡ぐらいはできるかもしれませんが、それも不確実です。

皆様には、暑い日本で暑苦しく押し付けがましいご報告にお付き合いいただき、申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかし、引率者にとっては日々の活動をまとめるとともに、研修生がこれを読んで振り返るための一助となればと思って書いてまいりました。現地で大急ぎで書き上げるため、誤字脱字、不適切な用字、意味不明の言い回し等ご不便をおかけしましたが、ご容赦ください。また、最終ブログは写真も少なくてすいません。昨日、今日と研修生に会っていないもので・・・。

ご家族の皆様はお子様の帰着後、最終日を含めじっくり、詳しくお聞きいただけたらと思います。引率者の勝手な思いを書いたこんなブログより、何百倍も迫力のある報告になると思います。そして、少し頼もしくなったな、と思っていただけるのではないでしょうか。

最後になりましたが、本研修にはさまざまな皆さんのご協力をいただいています。
研修本拠地であるCELTの所長Bianca先生、研修全体を取り仕切っていただいたMatthew先生、教材開発の中心になっていただいたTecla先生、校外研修等の手配を担当したFiona先生。この先生方には両プログラムがお世話になりました。
本校国際交流協会の皆様には、本校国際教育へのご理解をいただき、格別のご協力を賜りました。

また、今年から始まったSSH科学研修にはCELT以外にもWAサイドの多くの皆さんにご協力いただきました。
Bianca先生のご理解の下、研修のプログラムを組み上げたMatthew先生のご助力は再掲して深くお礼いたします。また、UWA工学部のRob先生は具体的なアクティビティの考案から実施までを一手に引き受けていただきました。
WA教育省のKarren Philp課長、日本語専門官 藤光由子先生は計画段階から積極的なご協力をいただき、視察をかねてPerth Mod.とのセッションをご参観いただきました。
Perth Mod.の校長先生と理科のAnt先生、日本語のYumiko先生なくしては、優秀なPMHの生徒さんたちとの交流は実現しませんでした。
さらに、日本側では、兵庫県西オーストラリア州文化交流センターの吉田哲所長とメリッサ・ルーキー副所長には、現地の活動に関して大変なご配慮をいただきました。また、在パース日本国総領事館にも格別のお取り計らいをいただいたことを付記いたします。
文化・語学研修もSSH科学研修も、西オーストラリア州政府代表部神戸事務所・平田典子所長のご協力があってこそ実りの多いものとまりました。平田所長には、準備段階はもとより、事前研修でのご講演、現地研修の円滑な実施等にもご尽力いただきました。

そして何より、若き研修生の背中を押し、遠いWAの地に送り出して下さった親御様、ご家族のみなさま。(コメントをいただいた皆様にもお礼申し上げます。)

皆様のご理解とご協力により、本年も大変充実した研修となりました。本当にありがとうございました。またの日まで、さようなら。

ガイダンス部長のつぶやき in Perth THE LAST
Perthは最高の陽気です。今日外へ出てみると、さわやかな空気の中、スワン川のほとりの公園で子どもたちが遊んでいました。それを見て・・・家のこと、うちの子たちのことを思い出しました。里心がついてしまいました。そろそろ帰ろうか・・・でも、暑いですよねぇ。うれしいやら何やら。たぶん研修生も、そんな思いなのかなぁ。P1020255.JPG

N.Miyashita@Perth
posted by 三田祥雲館 at 00:57 | 兵庫 ☔ | Comment(4) | 海外研修