2013年07月29日

NO.7 やるのはあなた〜主体性って何なんだ?

1 自己選択・自己責任に基づき主体的に生きる態度を育成し、積極的に地域社会に学ぶことを通じて規範意識や倫理観・正義感・人権を尊重する心を培い、調和のとれた人格の育成を目指します。

2 基礎的・基本的な内容の確実な定着を図り、個性や創造性を伸ばし、自ら学び、考え、行動できる能力を培い、地域で、そして世界で活躍する人材の育成を目指します。

突然失礼しました。本校の教育目標です。「主体的に生き」て、「自ら」「行動でき」て、しかも、「世界で活躍する人材」を「育成」することが、本校のミッションなのです。本日のブログは、そんな観点でお読みいただけたら幸いです。

【文化・語学研修】
先週の金曜日は、カバシャム野生動物公園に行って、かわいいコアラをなでたり、ウォンバットと写真を撮ったり、おっかなびっくり大きなへびに触ったりして楽しいときを過ごしました。あぁ、オーストラリア、楽しかった・・・では済まないのが、CELTのプログラムです。

朝一番の授業で「先週の金曜日はちょっと雨が降って残念だったけど、カバシャム楽しかった?」と尋ねる先生に、「Yes.」。「じゃ、動物の名前、覚えてますか?いくついえるかな?」といって、ホワイトボードに絵を描いたり、「starting with W(Wから始まる動物ですよ」とヒントを与える先生に、「Kangaroo」「Koala」「Wombat」と調子よく答える研修生たち。12、3種類のオーストラリア区固有種(詳しくは昨年度ブログ参照)がホワイトボードにリストアップされました。先生の「どれが好き?」との答えに、圧倒的支持を得るのは「コアラ」。「コアラ触りました。かわいかった〜」と答える研修生たち。このあとに待つ、課題も知らないで・・・。

「では、自分の好きな動物を選んでください。一番好きなのでいいですよ。できれば、他の人と重ならないように・・・。」ここで研修生の表情は「???。」先生はおもむろに「来週の月曜日、そう、皆さんがCELTで勉強する最後の日ですね。その日に皆さんに選んだ動物についてプレゼンテーションしてもらいます。プレゼンテーションってことは、oral(口頭)発表ですよ。」と伝えます。一瞬不安になる研修生たちに、「大丈夫。調べる時間はたくさん取れるし、一緒にがんばりましょう。」と先生が励まします。

そう、だから今日の朝はコンピューターが完備された情報教室での授業だったのです。そういうことだったのか。気を取り直してパソコンなら・・・と画面に向かいます。が・・・当然全部英語。でも、先生方がこの距離で寄り添うから大丈夫です。アニマル・プレゼン(presentation on animals)は過去に先輩たちも乗り越えてきたCELTの卒業検定、できなきゃ居残りも・・・?旅程どおりに帰国できますようにと祈りつつ、調査活動を見守ります。
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情報教室が使えない間も、充実した学習が続きます。まずこちらは「Running Dictation」。教室の外に貼られた張り紙に書いてある文章を一生懸命覚え、室内に走って帰ってグループ・メイトに伝え、書き留めてもらいます。何度も何度も出ては入り、入っては駆け出してきて必死に文章を覚えます。
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秘訣は丸暗記に頼らないこと。内容を噛み砕いて自分の心の中でイメージ化し、グループ・メイトの前で再文章化するのです。が、なかなか・・・。出てきては口の中でぶつぶつ、もごもご言って、走り去るの繰り返し。書き留めるほうも、聞き取り力や正確なスペリングが求められ、楽しい中にも総合的な英語力が試される優れたアクティビティなのです。

次のアクティビティは「pronunciation domino」です。正方形のカードの各辺に単語が印刷されており、同じ発音を持つカードをつなげていくゲームです。はじめはおとなしく、「えーっと、これはアイって発音するから、これと一緒かな?」などと悠長にやっていますが、だんだん他グループとの競争を意識して、大きな声に出して発音し、グループの結束も強まります。
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午前中の授業は、ここまで。なかなか盛りだくさんで、疲れた頭を昼食でリフレッシュします。で、午後は・・・。

「Seven Wonders of Australia(オーストラリアの七不思議)」をテーマに、オーストラリアの豊かな自然を紹介した新聞の旅行広告記事から、ある地の魅力をアピールしたり、プロモーションするための英語表現を学びます。その中では、adjective(形容詞)とnoun(名詞)の関係を学習するなど、文法も興味を持って楽しく学べる仕掛けがあります。
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学習の締めくくりとして、スモールプレゼン大会をやったり、日本の都市をひとつ選んで紹介エッセー(記事)を書いてくる宿題が出たり。興味を高め、学習を深め、自分たちで取り組む課題が課される。すばらしい学習サイクルです。宿題などは、Homestay Familyとの夕食時の話のきっかけとしても使える仕掛けです。「実はCELTで宿題が出て・・・手伝ってください。」「With pleasure(喜んで)。」そんな会話が目に浮かぶようです。
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あなたが動かなければ、誰も動かない。プレゼンも、発音ゲームも、伝言ゲームも、宿題手伝ってのお願いも。

【SSH科学研修】
午前中は英語の授業、題材は先週木曜日の「Geothermal Energy(地熱エネルギー)」の続きです。位置エネルギー(潜在的エネルギー=potential energy)や運動エネルギー(kinetic energy)などの基本用語の復習から始まり、evaporation(蒸散)、saline(塩)、desalination(脱塩、淡水化)など、難しい用語の習得に進みます。

そして話は佳境に入り、海水淡水化システムに関する2つの方式(method)の比較になりました。「distillationはコストがかかるし、carbon emission(炭素排出量)が多い。今多くの国でreverse osmosis(逆浸透圧法)が使われています。でも、熱せられた地下水のエネルギーを使えたらどうなるだろう。考え方は3つあるよ。ひとつはsustainability(持続可能性)。いくら良い方法でも、ずっと続かなければ使えない。次はrenewability(更新可能性)。地下の熱水は、使用後に地下に返してやれば、また熱水のエネルギーとして使えますよね。最後はeconomic viability(経済的実現可能性)で、いくら自然に優しくても採算が取れなければ続けることはできない。S(sustainability)・R(renewwability)・EV(
economic viability)の中でよいバランスを取れるエネルギーが、本当の次世代型エネルギーなんだ。」

もう完全に、英語学習の域を超えています。難しい単語も辞書を使ったり、Peter先生の説明を真剣に聞いたりして乗り越えていきます。眼差しは真剣。そんな彼らに、「学ぶということは、知識を習得するのがスタート。でも、それだけじゃない。それを使って、何が正しいかを自分で決める。そして行動する。それが学ぶということ。君たちはまだ高校生だから、できるだけ多くのことを知ること。それが大事だ。そして忘れないこと。忘れないための秘訣は、常に自分の関心のある事柄に心を向けておくこと。いいね。わすれないでね。」とPeter先生。最後の授業と錯覚するような熱い語りかけに、研修生の表情がいつになく引き締まります。理系の彼らに地理を教える引率者、生徒の表情を見て、「私の授業でも、こんな表情させたいな」と少しうらやましくなってしました。
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午後は教室を飛び出て、工学部のFaculty Tour(学部見学)に出発です。SSH科学研修にはUWA工学部も全面的に協力していただいています。

「Nice to see you again. Well, we have a special guest, Yusuke(ユースケ). YusukeはUWA工学部の日本人のPh.D(博士研究員)で、地盤工学を研究しています。これからの時間は、私がYusukeにインタビューする形で進めますね。」工学部側の本研修の総合コーディネーター・Rob先生が進めます。この1年間、本研修プログラムの策定に私と一緒に取り組み、誰より研修生の顔を見るのを楽しみにしていたRob先生が、少しでも興味を持って聞きやすくなるよう工夫してくれたのです。途中で日本語が入るものの、使用言語は基本的に英語。Rob先生とYusukeさんの流暢なやり取りが始まります。
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Yusukeさんの学歴や研究のバックグラウンドなどが紹介され、実際の研究活動に話が及ぶと、身を乗り出すように話に聞き入る研修生たち。なぜWAに来たのか、英語はどうやって身に付けたのかなど、年齢が近いだけに研修生に与えるインパクトが違います。この分野で世界的にレベルの高い研究をしているUWAでどうしても学びたかったのだとか。しかし、英語が苦手だったYusukeさん。彼が選んだ道は、そう、われらが学ぶCELTで学ぶこと。自分たちが学んでいるCELTでこんなにすごい人が学んでいたのかぁ、と感慨深そうに話に聞き入る研修生でした。

講義が終わり、研究室や工房(workshop)見学に出発です。教室を出て廊下を歩きながら、「Yusukeさん、かっこいいよな。おれも、ああなりたい。」「英語で研究っていうのがいいよな。俺も来ようかな。」などと口々に言い合う研修生たち。お、刺激受けたな、いいよ。

ではここからは、写真を紹介しながら、一緒にFaculty Tourへの誘いです。

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Yusukeさんの専門領域である地盤工学の実験室。この機械が高速回転して遠心力で高圧を作りだし、海底の圧力環境を再現して、海底油田開発に使う部品の強度を検査したりする。UWAは現在2基を保有し、3基目を建造中。日本にもあるが、ひとつの大学に3基は世界でも少ない。

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UWA Tunnelと呼ばれる施設で、強力な扇風機(タービン)で強風を起こし、構造物の強度を測定する。25年前までは建築物の強度検査にも使われたが、現在はパイプラインの強度検査にのみに使用。安全ゴーグルをかけ中に入ってスイッチ・オン。風上に向かって斜めに立ったり、髪の毛が逆立ったり。最高風速は時速約19キロ。(「寒い」というのが引率者の感想。「え、そこですか?」と全員に突っ込まれました。)

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学部生だけでレーシングカーを作る研究工房。2007年にはレースで世界一位に。また、速さだけでなく、自分たちで創意工夫した部品がその斬新さで表彰されたりもしている。最高時速は100キロに達するが、問題はトップスピードよりacceleration(加速性能)で、カーブ後にどれくらい加速できるかが勝負の分かれ目。学部のイメージカラーのひとつ黄色の車体には、スポンサー企業のステッカーがたくさん貼られていた。

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古くなったレースカーを電気自動車に改造する工房。リモコン操作が可能で、付属のセンサーで自動的に障害物をよけることもできる。約80キロでの倉庫が可能。4本のタイヤそれぞれに独立モーターをつけて走行性を高めた次回作を作成中。

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こちらはNanofabrication Facility(ナノテク加工施設)。UWAの研究者はもとより、この施設を利用しにオーストラリア中から研究者が集まる。黄色い光の部屋は通称「Yellow Room」。そのまま。高感度のカメラに使用する基盤を作っており、紫外線が大敵のため、特殊な黄色のライトで照明。

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こちらは超高感度部品を作成する部屋。室内の空気の成分が厳格に管理されているほか、手前の機会には特別な気体がパイプで送られ、特殊なマイクロチップ(ナノチップ)を製作する環境を作り出す。数年前には暗闇でも完全カラー撮影ができるディバイスを発明し、米軍に採用された。

ところでさっきからアインシュタインによく似た老紳士が廊下を行ったり、来たりされています。「Rob、だれ?」「え、知らないの?あの人がNassibian博士だよ。」「だれ?」「この研究所の看板見ただろ。この研究所の名前になっている有名な先生だよ。写真とってもらったら?」そう、この研究所の正式名称はNassibian Nanofabrication Facility。写真、残念。

日本にいてもなかなかできない経験に、一同興奮気味。やはり君たち、SSH生だね。生き生きしているよ。そして口々に「こんな経験、この研修に来ないとできなかったね。」という研修生。皆、本当にいい笑顔です。I’m really pleased to hear it(それを聞いたら私も満足)。

Rob先生にも訳して伝えると、満面の笑みを浮かべました。「大変だったけど、やってよかったな。ありがとう。I’m so happy to work with you(一緒に仕事できて、うれしいよ)。」というと、「おんなじ気持ちだよ。キャリア教育の観点からも、良かったと思うよ。Naokiの専門だろ。でも、the programme has just begun(でも、まだプログラムは始まったばかり)。まだやることはたくさん残ってるよ。」Rob先生とTourにも同行してくださったYusukeさんにお礼を言って別れを告げます。

「どうだった?」CELTへの帰り道、こう問いかけました。「知らないことばっかりでした。」「知ることができて、良かった。」「進路に役立ちますよねぇ。」と研修生が口々に答えます。工学部にもいろんな専攻がある。外国で学ぶという選択肢もある。「生き方は知ってることからしか選べないって去年の講演会で聞いたでしょ。良かったね。何事も興味を持って自分から、だよ。」画竜点睛を欠くのはいけないと思って言った一言が、実は蛇足だったりするのが私の悪い癖です。一瞬、また言い過ぎたかな、と思ったが、私の言葉に大きくうなずく研修生に、成長を見た引率者でありました。

ガイダンス部長のつぶやき in Perth
毎晩、ブログを書いていて抱く、漠然とした不安。文章の長さと読んでいただける率は、反比例するのではないか。反比例するだろう。反比例するはずだ。反比例するに違いない。いや、明らかに反比例しかしない。
ネットって、不思議な感覚に陥るものですね。

N.Miyashita@Perth
posted by 三田祥雲館 at 23:31 | 兵庫 ☔ | Comment(10) | 海外研修
この記事へのコメント
読んでますよ。
いつも詳しい報告をありがとうございます。
たくさん書くのも楽ではないはず。
心より感謝して、毎日楽しみに見せて頂いてます。

Posted by AO at 2013年07月30日 00:31
毎日、ありがとうございます。ブログ更新楽しみにしています。
授業内容にほんまについて行けてる!?!?!?と驚きつつ、写真でみると皆さん良い表情してますね。
きっと出来ますね。発表、頑張って〜(^_^)/
Posted by MI at 2013年07月30日 00:46
一字ももらさず、読んでいます。田舎の80歳のおじいちゃんも毎日このブログの更新を楽しみにして読み、毎回感動の電話をしてきます。「孫の成長がよくわかって、生きてるっていう気がするよ~」と言っております。本当にありがとうございます。
私は特にSSH研修プログラム内容の濃さに驚いています。生徒たちがどこまで、理解しているかはわかりませんが、夏休みの海外研修でここまでの深い内容の体験ができるプログラムってあるのでしょうか。研修生がこのブログを読めばその日一日あったことが復習できるでしょうね。
Posted by 祥雲親 at 2013年07月30日 01:01
毎回、楽しみに読ませてもらってます。
これだけたくさんの経験ができることに、感謝です。頑張ってる様子がわかって、とても楽しく拝見させてもらってます。
Posted by kobutamama at 2013年07月30日 06:30
Gone too soon,so much! 光陰矢の如し。
その真っ只中でSSH研修生ピカピカ!86歳10ヶ月の一人暮らしの小生、信州の諏訪で、孫のビッグな人生上のこのチャンスに毎日が感動、感動の連続です。詳しい報告に一字一句を洩らさず未来を重ね合わせています。ほんとうに心より感謝です。
Posted by 祥雲祖父 at 2013年07月30日 10:09
お疲れのはずなのに毎回のブログの更新感謝しております。本当に充実したプログラムにびっくりです。帰国後の成長した姿が今から楽しみです。
Posted by CB at 2013年07月30日 10:28
詳しい報告、一字一句が感動、感動の連続です。
小生86歳10ヶ月の一人暮らし(信州諏訪で)ですから、SSH研修生が、まさに宝石ピカピカに輝いて観えます。素晴らしい未来が重なり合います。
皆々さまの抜群の熱意と視野の広さそのもののお陰です。ほんとうに心より感謝しています。
Posted by 祥雲祖父 at 2013年07月30日 12:40
コメントをいただき、ありがとうございます。

日々の長文で、皆様には大変ご迷惑をおかけしています。同じ読むのでも、印刷物より画面のほうが目が疲れる気がします。それなのに多くの皆さんにコメントまで寄せていただいて、感謝いたします。

研修生たちはみな、格闘しています。英語と、異文化と、親元から離れるなれない生活と。そして、なかなか心が開けなかったり、「わかりません、教えてください」の一言が出なかったりする自分の弱さと。

うちの3つになる息子の今の一番の疑問は、「おとうさん、何で僕の顔、僕に見えないの?」「鏡で見えるのにねぇ」というと「ないと見えないねぇ。へんだねぇ。」そう、鏡がなければ自分の顔が見えないように、自分の心も何かに映して初めて見えてくるのではないでしょうか。そうだとすれば、多感なこの時期の外国体験、異文化体験は心を映し出す絶好の鏡になると思うのです。私の実体験からも。

ということで、よほどのことがない限り手出しはしないで見守ろうと思います。もどかしかったり、歯がゆかったりで、我慢するのが大変ですが、多くは言うまい・・・。その分ブログをはけ口に使っているようで申し訳ありませんが、しばしお付き合いください。
Posted by N.Miyashita@Perth at 2013年07月30日 18:04
お忙しいところ誠にご迷惑ですが、SKをリンクから外してください。プライバシーの立場からです。(必要なら祥雲祖父がいいかな)
Posted by 祥雲祖父 at 2013年07月30日 21:25
コメントをいただき、ありがとうございます。

お申し越しのとおり、リンクをはずしました。配慮が至りませず、失礼いたしました、ご容赦ください。

お手数をおかけしますが、お名前の欄に「祥雲祖父」さまとお書きいただけたら幸甚です。

これに懲りず、よろしくお付き合いくださいませ。
Posted by N.Miyashita@Perth at 2013年07月30日 22:38
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